カフェでの噛み合わないトークと夜のワークショップ

多田は46年。風体はかわいくもひどくも世代相応だったが、普通にしていてくれれば気さくで取っ付き易い人物だし波長は合いそうな模様はやる。
「そう言えば婦人……じゃなかった、女房君は休職中頃と言ってましたよね?」
「はい。でも意外と、じきに世間復帰するでしょうけど」
自分は他人事のように何の道理も無く言ったが、そうでないとこれとて弱る。
「やりたい生業が見つかれば良いんですけどね」
自分は今になって妙な違和感を覚えた。多田とのおしゃべりはまったく噛み合っていない。
おおかた多田は「休職中頃」を「無職」と勘違いしている。
一向に偶然の力のような奇跡的な行き違いだった。
しかし、今更どうしてレクチャーすればいいのか思い付か。どうして足掻いたところで女房は多田にそんな風に見られているのだから。
「ちなみに、女房君の前職業は?」
「新聞紙配達を5世代近隣やってたみたいです」
「5世代!?5世代もですか!そりゃあ強い!」
多田に女房の面会の予行勉強を頼んだ物覚えはなかったのだが、隣人同士の夜のワークショップは延々と続いた。